旅好き女の二輪教習日記

25歳156cm運動音痴の女が普通二輪免許を取ろうと思い立ちました。

普通二輪教習(23) 雷、土砂降り、絶望のみきわめ

梅雨というより雨季という気候の中。雨がギリギリ曇りになり、教習車両も少ないラッキーなタイミング。いよいよみきわめ。まぁ一発では通らないというか一発で通ったら逆に卒検との間隔が空くし卒検用車両にも慣れられないから気楽に行こう、いつかは通るだろう。そんなマインドセット。とはいえ緊張はしていた。

まさかの教習中止

教官には「とうとうみきわめだね」と、クライマックス感のある調子で話しかけけられる。コースは覚えたか、今まで何を指摘されたかなどなど。今日は2番の卒検用車両で、それまで乗ってた車両と比べるとやっぱり目視でもシート高が違うように見える。「この卒検用車両の重心と車高が高くて苦手」と話すと、「本番もこれだろうからね、慣れるしか無いね」と返される。まぁそりゃそうとしか言いようがないな。

今日は車庫から引っ張りだすところから始める。前言われたことを思い出し、なるべく大股で踏み出し、何度もハンドルを切り返しながらやっとの思いでポジションにつけ、改めて教官の話を聞く。

突然、目の前がピカッと光る。即座に爆発したかのような凄まじい音。まさかの落雷。目の前にいた教官3人がウワっと声を挙げて頭を抱える。めちゃくちゃ近い。光ってから音がするまで0.5秒あるかないかくらいの距離感。

それまで雷の音などしていなかったのに。ゲリラ豪雨ならぬ、ゲリラ雷。こんな予測できない雷に撃たれたらひとたまりもない。既にコースに出ている二輪教習生が続々と車庫に避難してくる。

教習は中止となった。みきわめどころか、バイクにまたがる前に中止。雷を除けば良コンディションだったのに。緊張からの予想外の解放で呆然。

予想外の翌朝予約滑り込み

受付で次回の予約を取り直し。「ざざいずみさん、地道に通って頑張ってたのにね。中止は残念だったね」とねぎらいの言葉をかけられる。1月から通ってる古参はそろそろ少なくなってきているんだろうな。なんか地道に通ってる人がいるぞ、というのを認識している人がいる。それは考えてみりゃ大して不自然じゃないのだけど、孤独に頑張っている身にはちょっと意外に思えた言葉だった。

「早くみきわめ受けたいでしょう」と、翌日朝に予約をねじ込んでもらえることになった。これまた予想外の展開。帰ってから必死に今日着たいつもの教習服を洗って必死に乾かすこととなった。



史上最悪の土砂降り、絶望のみきわめ

翌朝、再び教習所へ。前日の予報では降水確率30%、晴れはしなくてもそんなひどくはないんじゃないか、と思っていたけど。準備の際は雨が止んでいたけど。ウェザーニュースの5分間予報を見ると、めちゃくちゃ降りそう。あまり雨装備をしていない教習生を尻目にレインパンツを装備する。

改めてみきわめ。今日もあの乗りにくい卒検用2番車両。慎重に乗車。思い切り身体を前に倒してゆっくり乗ったほうが乗りやすい。

まずはウォーミングアップ走行。シフトチェンジだけは恐ろしく軽快な車両。

続いて早速発着点に入り、いよいよみきわめコースを走る。
まずは1周。踏切に入る際に1速にし忘れかける。全体的にやはり重心が掴みづらく、小回りや2速以上での減速が怖い。かろうじてS字クランクまではこなしあげたが、気が抜けるとすぐウインカーを消し忘れる。左右に重心を振るのが嫌でスラロームもノロノロ通過。一本橋、急制動、坂道をこなす。坂道後の合流でキープレフトせず中央にはみ出る。発着点に戻り、超慎重に降車。

とりあえず転倒しなかったことにほっとする。しかし教官からは当然指摘の嵐。クランクがパイロンギリギリだったとか、左折で膨らんでキープレフトが崩れるとか。左折は小回り苦手なら当然そうなるな。だいぶ前にクランク出口で小回りしようとしてエンストからの転倒の感触が結構トラウマっぽく、減速時にクラッチをやたら切る癖がある。でもあまりクラッチを切りすぎると逆に小回りしにくい。リーンインするほうが優先度としては高い。その時にはそこまで頭が全く回らなかった。ただただ高重心が嫌だという気持ちしかなかった。

2周目あたりから雨が本格化してくる。時折土砂降りにも程がある雨に打たれる。今まで数々の教習雨に耐えてきたレインジャケットにとうとう水が染みる。別に寒くはないけれど、顔に雨が当たるのがつらい。バイザーのないタイプのヘルメットを借りている。それ以外は全部サイズが合わないため仕方なく。それが仇となって、ひたすら顔に雨が全力であたってくる。視界がつらいし体力がすごい勢いで消耗していく。やけくそでコースを1周。

教官からは指摘の雨あられ。キープレフトがとにかく解ける。あまり1回目から変化がないもよう。何を指摘されたか、具体的な記憶がほとんどない。それくらい辛かった。

体力も気力もない。でも、3周目を周れと言われて駆け出していく。嘘みたいな土砂降り。視界はほとんど潰れていた。クランクの出口の後の交差点で左右確認を忘れているとの指摘を後ほどされたが、それすらままならないほどの視界。酷すぎた。さっさと自分用ヘルメットを買わなかった自分を恨んだ。ひたすら必死に走りに走った。後半になると少し雨が弱まったが、消えた気力と体力は戻らず。坂道発進に一度失敗。本来はリアブレーキを離して発進するところ、先にクラッチをつなげてしまいエンスト。心底嫌になった。ボロボロのまま発着点に戻る。最後の気力を振り絞って、転ばないように降車。

キープレフトと左折の膨らみをやはりまた指摘された。自分なりには意識しているはずなのに、具体的にどこで起こっているのか。わからなくなっていた。クランクは1、2回目よりもギリギリ度が減っていたらしい。スラロームは1、2回目よりもタイムが悪化し、9秒台に乗ってしまった。

次回ももう1回みきわめをやることに。1回で通らないのは予想通りだけども。むしろみきわめでなるべく時間を使って卒検用車両を練習しておきたかったのだけど。思ったより落ち込んでしまった。何も身になっていない気がして。

受付に向かい、昨日予約を担当してもらった方に声をかけ、次回の予約を取り直す。最初声が聞こえなかったのか「検定の申し込みはあちらだよ」と言われる。「いや、補習なんですが」と声を挙げる。補習なのは予定通りなのに、ちょっと惨めな気持ちになる。声をかけたところで、いつも通り次の予約に回るだけだろうと思った。けれども、なぜか手招きされる。「今日の午後時間ある?せっかく頑張っているでしょう、この時間帯なら入れられるよ」とのオファー。

またいつ悪くなるかわからない天気予報。自然乾燥ではまず乾きそうもない全身ずぶ濡れの身。体力を養って、日を改めてチャレンジしたほうがいいかもしれない。

そう思ったけど。押し切られたような気分で、午後に教習を入れてしまった。帰りながらぐるぐると考えが止まらない。間に合せのレインウェアを買おうか、コインランドリーで乾燥しようか、いや、やっぱり電話してキャンセルしようか。そんなことを考えながら。



泣きっつらに自転車パンク

着替えもなくずぶ濡れのまま自転車に乗り、家を目指す。とたん、何かがおかしい。自転車からガタガタ音がする。見ると、後輪タイヤがパンクしていた。絶望的な気持ちになる。なんで、こんな時に。完全に気持ちが折れる。号泣しかける。もうやだ。リアルに嗚咽が漏れる。

幸い、自転車屋がすぐ近くにあった。後輪を持ち上げながら自転車を押して駆け込む。老年のおじいさま店主がまったりと座っている。ちょっと面食らう。リラックス具合が東南アジアあたりの個人商店のゆるさを思い出させる。なにはともあれパンク修理をお願いすると、さくさくと目の前で作業に入っていった。

作業の様子を眺めながら待つ。私自身、パンク修理を自力で何度かしたことはある。でも、今の自分にそんな気力はない。もう今なら1000円でも2000円でもいくらでも払ってもいいからお願いしたかった。以前パンクしたときも、最悪にもほどがあるタイミングだった。盲腸にかかり、近くの病院に行こうと自転車を出したらパンクしていた。フラッフラの身体で病院まではるばる歩いていったことを思い出す。自転車は最も最悪なタイミングでパンクする法則でもあるのだろうか。

結果、5ミリくらいの石粒がタイヤに刺さっていた。きれいに尖った三角形だった。修理代は900円。もっと払っても良い気持ちになる。淡々としたプロの作業を眺めているうちに、絶望的な気持ちが少し落ち着いた。自転車屋なんてそうたくさんあるわけじゃないのに、すぐ近くにあったのは本当に不幸中の幸いだった。

家に帰り、ずぶ濡れの服を乾かす。憎らしいほどの晴れで、みるみる服が乾いていく。雨が土砂降りだったのなんてほんのわずかな時間で、それなのに私の教習時にバッチリあたってしまったことが恨めしかった。

朝見た時には午後から晴れ予報だったのに、見るたびに天気予報はどんどん曇り、雨に変わっていく。直前には、なんと私が教習を入れた時間帯だけが雨予報に変わっていった。雨女にもほどがある。爆笑するしかない。もう。雨が降らないのは期待しないから、せめて土砂降りでないことを祈った。

ボロボロの身体で昼寝し、ご飯を食べ。あっという間に、再度の教習に向かった。