旅好き女の二輪教習日記

25歳156cm運動音痴の女が普通二輪免許を取ろうと思い立ちました。

普通二輪教習(25) 緊張と波乱の卒検、そして……

いよいよ卒検。
前日は全力でコンディション調整に臨む。ラベンダーオイルを枕に塗る、マッサージ、ストレッチ、眠りの深くなるサプリ、瞑想。リラックス法のフルコースにも関わらず、朝3時と6時に目が覚める。しかも卒検の夢まで見た。集合場所に行ったら入校希望者が溢れていてで卒検の集合場所がわからなくなる夢。表面的にはリラックスの皮を五重くらいにかぶせているのに、ダメだったもよう。絵に書いたような追い込まれっぷりに苦笑するしかない。

早めに起きると全身がガッチガチ。ストレッチと瞑想と体操に1時間ほど費やし。いざ出発。

梅雨明け当日、超グッドコンディション。直射日光にはならない、雨降りそうもない軽い曇り。日は暑いが空気は涼しく爽やか。これまで8ヶ月間教習やってきた中でも最高クラスの良い気候に逆にびびる。

意外と気になることの多い卒検前説明

卒検の集合場所に着き、まずは教室で説明を受ける。

今日卒検を受けるのは大型二輪3人、中型二輪は私含め2人で、私以外皆さん男性。

コースはいつものみきわめコースに周回が1周足された形。急制動とは別に指定速度40kmまで上げる課題が地味に増える。エンジンかけてから次のカーブまではウォーミングアップ区間とみなされ、蛇行もノロノロも停止転倒も自由で採点されない。事前イメトレと大差はないが、初めて知る若干の違いにイメトレ脳が混乱しないか少し心配になる。

基本的に卒検は検定中止レベルのやらかしをしない限りは通します、といったあまり厳しくない印象。まぁ一発で通らなくても検定中止にならなければ御の字だなと思う。


緊張の待ち時間

説明終了後30分程度間を空けてから準備、検定開始。待っている間に大型二輪の方に話しかけられる。「一本橋とかもう減点前提で落ちないでバーッと行っちゃったっていいからね、僕は前回一本橋で落ちちゃったんだよ」とか。

車両はかのにっくき2番車両。検定担当の方は初めて見る方。

いよいよコースに向かい、準備。先に四輪が卒検車両に乗り込んで消えていく。みんな準備体操している。私も人目をはばからずめちゃくちゃストレッチしまくり、目を閉じて呼吸に意識を集中する。

私の順番は普通二輪の中で2番目。大型と普通は少しずらしつつも並行して行う。
まず1人目の大型と普通の方が乗車。勢いをつけながらスピーディーにボウンッとはずみをつけて乗車していく。普通はあのくらいサクッと乗れるもんなんだ、私にはできそうもないな、なんて思う。じきに二人ともコースへ消えていく。後ろから検定員がコース指示を出しているのが聞こえる。

落ち着かず、ひたすら準備体操をしまくる。1人目のお二方は順調にこなし、無事に発着点に戻ってきた。


波乱万丈の卒検

いよいよ私の番。緊張はしているが、真っ白になるというほどではない。まぁ、今回は体験気分くらいの勢いで行こう。そんなテンション。
慎重に慎重にバイクを起こし、乗車。やっぱり足付きが悪くてドキッとする。足付きしてからニーグリップに戻すのが厄介。ニーグリップの姿勢位置がなんとなく定まりにくく気持ち悪い。前回乗った車両との違いを嫌でも知らされる。

ゆっくりゆっくり乗車手順をこなし、ようやく発進。ならし区間で軽くスラロームもどきや低速走行を行う。いよいよ検定区間に突入。まずは外周を一周し、指定速度40km/hに上げる。難なくクリア。

しかし、その次最初の右折ウインカー操作時、うっかりホーンボタンに触れてクラクションが鳴ってしまう。指が短いのを延長しようとグローブの親指に詰め物をしたのだけど、その詰め物が曲がってクラクションに触れた形。アホや。一気にテンションが下がる。

焦りを引きずったまま右折。思い切り減速したら、ギアが落ちきっていなかったようでエンスト。激しくガクガクッと振れて停止。コケるかと焦ったが、必死に持ちこたえる。必死に息を付き、ギアをしつこく確認してから再発進。ふだんはセカンドで行く右左折の連続をローのまま行き、踏切前で停止。急に頭に血がカーッと上がる。こっそり舐めていた塩ミルク飴が急激にしょっぱく感じられ、味覚の変化にびびる。慌てて噛み砕こうとする。

踏切はエンストなく通過し、続いてS字とクランク。エンストしませんようにとローギアで祈りつつ、目線とニーグリップだけ気にして無事通過。いつもよりも車両が劇的に少ないおかげで苦手な出口付近停止も発生しなかった。

その後もエンストのショックが抜けきらず、ゆっくり走行する。確か10km/hレベルじゃないと減点対象にならないはず。メリハリよりも落ち着きを優先することにした。確実に安全確認し、交差点周りの右左折連続。このあたりでもう1回エンストした記憶。ぶっちゃけ必死過ぎてあやふや。ただ、エンスト2回目ともなると開き直りスイッチが急激に入ってきたのを覚えている。もう本当に、今回は卒検体験やな、と。バイクの熱が足にじりじりと伝わり、脳みそにまで熱がこもっていく。

障害物を避け、一番の苦手科目スラロームに突入。とにかく安全牌に寄せてゆっくり通過。無事パイロン追突を逃れる。

続いて一本橋。検定員のタイマー準備で間が空く。嫌でも緊張が高まる。ニーグリップと目線と肩の力を死ぬほど気にする。そうしたらクラッチ離すのがあまりにもゆっくりすぎてエンスト。3回目。笑うしかない。落ち着いているつもりで、いかにガチガチかを客観視しだす。何度も息を着いて肘をぶらぶらさせ、ローギアに入っていることを再確認し、クラッチミートの感触に全力で耳を澄ませて再発進。乗り込んだ勢いで少し右に寄る感覚がしたがそこは無心とバランス感覚で乗り切り、いつも通り後半ググッと減速。無事乗り切る。7秒は余裕で乗ってるくらいの、いつもの感覚だった。

続いて急制動へ。いつもより開始地点はかなり前、しかも先行車両なしのためノンストップ。車両が少ないからこそできるエクストラモード。加速をやりやすくする配慮なんだろう。けど、逆にイメトレと違うのにむしろ戸惑いつつもノンストップ加速。天気が良すぎてギアのランプが見えない。もしかしてセカンドのままじゃないかと一瞬不安になる。いつもと違う感覚の連続に焦る。なんとかぎりぎり40km/h届いたかなレベルでブレーキ。やり直しは命じられなかったので成功してたらしい。良かった。

続いて坂道発進。脳内でめちゃくちゃ手順を声に出す。アクセルの回し加減が一瞬思い出せず、何回か回し直してからやっと発進。無事エンストなしで坂道を降りていく。ようやく発着点に戻れる。ここまで検定中止にならなかったことに安堵する。


呆然の帰着

指示された発着点に止める。ニュートラルに入れ、エンジンを切り、超〜慎重に降車。他の人の10倍くらいの時間をかけた。降車に時間制限はないと言い聞かせて、とにかく倒さないことだけを気にした。無事転倒なしで終える。

まもなく大型二輪の3人目も帰ってきた。いくらなんでも私時間かけすぎたか?と思う。大型二輪の方に話しかけられる。「お疲れ様。一本橋でエンストしてたね。まぁ減点されるだけだから大丈夫でしょ!」「僕なんて一本橋5秒くらいでダーッと行っちゃったよ」いやぁ、あそこだけじゃなくて他にもエンストやらかしてるんですよね……。

検定中止にならなかったのが不思議な出来だった。私の認識してる限りでも減点要素が多すぎる。エンスト3回、クラクション誤操作、スラロームのろのろ。最低でも25点減点。
100点中70点残ってれば合格だけど、あと2つ、5点減点要素がある可能性は充分にある。進路変更をふらつきとして取られたんじゃないか、スラローム9秒超えて10点減点になってるんじゃないか。もうギリッギリにも程がある。減点積算で落ちることは充分に考えられた。ただ、みきわめで散々言われたウインカー切り忘れはなかったのが幸いだった。イメトレの成果が確実にあった。

しかしながら、とにかく後味が悪い。やっぱり検定車両の感覚が気持ち悪い!つらい!
シートのどのあたりの位置に座れば安定するのか、どこまで低速をエンスト無しで持ちこたえられるのか、クラッチミートの許容範囲はどれくらいか。そういうド基礎中のド基礎の車両感覚がわからなくなった。どうしようもなく緊張しすぎて課題を失敗する、みたいな感じでもなく。ただ、検定車両に慣れず気持ち悪い、もしくは、慣れとか関係なく車両をねじ伏せられない純粋な技術不足という感触が残った。緊張はどうにかなる。頭が完全に真っ白にはならなかった。問題は車両感覚だった。

とはいえ、卒検に受からなくても検定中止にならなかっただけで大勝利と思えた。1回目エンストなんて久しくないレベルの停止ガクガクエンストで、本気で転ぶかと思った。一本橋前のエンストも、普通なら動揺して一本橋から落ちているか急ぎ過ぎの減点くらっても不思議でない。エンストは3回ともうまく仕切り直して再発進できた。課題はスラロームが遅い以外、検定中止にならない程度には通過できた。普段失敗したことないような課題で失敗して検定中止になるというのはよく聞く。何回頭に血が上ったかわからない状況下でこれはすごいのではないか。それだけで自分を褒めよう。


発表の瞬間

教室に戻り、発表まで30分近く待つ。その間にブログのここまで部分をスマホに打ち込む。落ちるつもりで補習は何曜日を希望しようかと天気予報を眺め、補習から再卒検までのスケジュールを思い描く。

予定よりも若干早く発表が始まる。普通二輪と大型二輪に分かれて担当検定員から話を聞く。まずは講評。私には「乗降車などはとても丁寧だったが、何より転びやすいのはエンストしちゃうことなので気をつけてください。転ばなかったから良かったですけどね」と。たぶん検定員から見てもあれは転倒するエンストだなと思われたんだろう。「あとは全体的にスピード抑え目なので、もう少しメリハリをつけましょう」とも言われた。1人目の方も同じ指摘されていた。まぁそれは作戦でもあるよね、なんて思う。

「というわけで、2人とも合格です」と告げられた瞬間。

のけぞった。本当に驚いた。マジでギリギリで受かってしまっていたのか。ありがとうございます、と反射的にお辞儀をした。

会計係に卒業式の指示を受ける。今日受けた5人とも卒検合格らしい。めでたい。


2時間ほど暇なので、近所でご飯を食べて買い物。まだ受かった現実感がなく、開放感に乏しいままふらふらと歩き回る。嬉しさよりも、驚きと呆然の余韻が圧倒的に強かった。


卒業式

卒業式に向かう。

免許センターはコロナ明けのせいかやはり混んでいるらしく、学科試験を受ける人は曜日と時間帯を指定されていた。四輪を大学時代に取っておいて心底良かったと思う。SDカードの入会案内も「もう入ってます」という顔で堂々とパスできた。まぁ実際持ってないのだけどね。

アンケートを書く。「他の車種免許を取る予定はあるか」との項目がある。今のところ大型を取る気はしていない。中型ですらつらい体型で、かつ大型に憧れがあるわけでは今のところない。「異種免許キャンペーンの案内を送る」とあるから、念の為、という気持ちで大型予定、キャンペーン案内にOKと書いた。大型も取りたい!と思えるレベルにバイクにハマる未来は来るのかな、0では無いのかな、なんて思う。



卒業証書には確かに私の名前と「普通自動二輪」と記されている。現実感がない。ほんとうに取れてしまったのである。

結果、コロナ休業期間含めて8ヶ月、補習6回で卒業までこぎつけた。想像の3倍は長く、想像の100倍は辛かった。コロナのおかげで休業から繁忙期のずれこみまで、何もかも予想外に満ち溢れて苦しかった。卒検も再度の緊急事態宣言で休業になったらどうしようと不安を抱えながら臨んでいた。そこまでして取った免許。どうにか活かしてあげたい。



応援してくださった皆様、ありがとうございました。まだもうしばらくは記事を書く予定です。